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(1)法定相続人(だれが相続人になるのか)
相続人になれる人は、民法で決められています、これを「法定相続人」といいます。
「法定相続人」は、大きく「配偶者相続人」と「血族相続人」の2つに分類することができます。
「血族相続人」については、相続人になる人が先に亡くなっており、その相続人の地位を受け継いだ「代襲相続人」があります。
配偶者相続人
「配偶者相続人」とは、相続人が配偶者の場合のことです。
つまり、被相続人の妻もしくは夫のことです。
被相続人が死亡した時点で法律上の婚姻関係にある配偶者は、必ず相続人になる権利があります。
なお、配偶者相続人となるには、被相続人が死亡した時点で法律上の婚姻関係にある配偶者でなければなりません。
内縁の配偶者や事実婚で入籍をしていない夫婦、愛人等は、相続人にはなれません。
逆に、たとえ夫婦間に愛情が微塵もなく、完全に冷え切った状態であったとしても、また何十年も別居状態にあったとしても、正式に離婚していなければ、法律上の婚姻関係があるので、残された人は配偶者として相続権が得られます。
血族相続人
「血族相続人」は3種類あり、子などの直系卑属、親などの直系尊属、兄弟姉妹がこれに当たります。
血族相続人には相続人になれる順位があり、まず子などの直系卑属、子などの直系卑属がいなければ親などの直系尊属、直系尊属もいなければ兄弟姉妹が相続人になります。
血族相続人、及び相続人になる順位
第1順位 | ① 直系卑属(被相続人の子、孫、ひ孫) |
第2順位 | ② 直系尊属(被相続人の父母、祖父母、曾祖父母) |
第3順位 | ③ 兄弟姉妹 |
①の直系卑属には、前妻との子供も含まれます。前妻には相続権はありませんが、前妻との子供には、相続権があるのです。
第1順位の①直系卑属が生きていれば、第2順位②直系尊属と第3順位③兄弟姉妹は、相続人となることはできません。
直系卑属が優先しますから、例えば、父が亡くなった時点で子供が亡くなっていたとしても、その子供に孫がいれば、孫が代襲相続人として直系尊属に優先します。
また、第1順位の①直系卑属が全員亡くなっている、最初からいない、相続をする権利がないという場合は、②直系尊属が相続人となります。
そして、②直系尊属も全員亡くなっている、相続をする権利がないという場合は、③兄弟姉妹が相続人となります。
なお、配偶者は、上記の①~③の者と一緒に相続人となります。
一昔前は、兄弟姉妹に相続する権利が回ってくることはあまりなかったのですが、近年、少子化等の影響で、第3順位の③兄弟姉妹に相続する権利が回ってくることがかなり多くなってきております。
(2)代襲相続人
「代襲相続」とは、簡単に言えば、親が「死亡」した時点で子供が先に亡くなっていた場合に、親の遺産を子に代わって孫が受け継ぐという制度です。
子供が先に亡くなっていた場合だけでなく、「相続人廃除」や「相続欠格」によって、子が相続人ではなくなっていた場合にも代襲相続は生じます。
一方、子が「相続放棄」によって相続人ではなくなっている場合には、代襲相続は生じません。
代襲相続が起こるケース
① | 死亡 |
② | 相続人の廃除(民法892条、893条) |
③ | 相続欠格(民法891条) |
直系卑属の場合は、何代でも代襲することが認められています。
直系尊属や配偶者には代襲相続は認められていません。
※ 兄弟姉妹の場合は、兄弟姉妹の子(甥、姪)まで代襲することが認められていますが、兄弟姉妹の孫(又甥又姪)は代襲相続をすることができません。
(3)法定相続分(だれがどの割合で相続する?)
法定相続分は、民法で定められた相続人の遺産取得の割合です。
この割合は、法定相続人の地位により異なります。具体的には以下の通りです。
配偶者と直系卑属(子(子がいない場合は孫など)) 各2分の1の割合
法定相続人 | 法定相続分 |
配偶者 | 1/2 |
子(子がいない場合は孫など) | 1/2 |
子が複数いる場合は子の法定相続分を頭割りで承継。
配偶者と直系尊属(親(親がいない場合は祖父母など)) 配偶者3分の2、直系尊属3分の1
法定相続人 | 法定相続分 |
配偶者 | 2/3 |
親(親がいない場合は祖父母など) | 1/3 |
親が複数いる場合は親の法定相続分3分の1を頭割りで承継。
配偶者と兄弟姉妹(兄弟姉妹がいない場合は甥姪) 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
法定相続人 | 法定相続分 |
配偶者 | 3/4 |
兄弟姉妹(兄弟姉妹がいない場合は甥姪) | 1/4 |
兄弟姉妹が複数いる場合は兄弟姉妹の法定相続分4分の1を頭割りで承継。
(4)相続人の確定と戸籍収集の流れ
以上を踏まえ、具体的に相続人を確定する必要があります。
銀行などの金融機関や役所をはじめ対外的には、いくら自分たちが相続人ですと言っても話が進みません。
対外的に相続人であることを証明するには、戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)を取得しなければなりません。
戸籍(除籍、改正原戸籍)の取得方法
最後の本籍地のある市区町村役場へ出向いて請求します(郵送での請求も可能です)が、最後の本籍地が分からない場合は、最後の住所地(亡くなった際の住民登録上の住所)の市区町村役場で本籍地の記載のある住民票を取得すれば分かります。
窓口で「相続関係調査のため,そちらにある被相続人関連の戸籍謄本類すべてを送付して下さい」と伝える(郵送の場合は、当該記載のあるメモを同封)と、当該市区町村役場にある戸籍謄本類すべてを交付(郵送での請求の場合は送付)してくれることが多いです。
発行された戸籍謄本(除籍謄本、改正原戸籍)がいつ作成されたものか、作成される前の戸籍の本籍はどこかをチェックします。

被相続人に子供がいない場合、両親の出生まで遡った戸籍(除籍謄本、改正原戸籍)を取得する必要があります。
さらに、両親や祖父母(場合によっては祖祖父母)が死亡等いない場合で、被相続人の兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、その兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍(除籍謄本、改正原戸籍)を取得する必要があります。

一緒に住民票(本籍地入り)か戸籍の附票を取得したほうがいいです。
相続人調査方法の概要は以上のとおりです。
時間と労力をかければ、一般の方でも自ら行うことは可能です。
しかし、相続人関係が複雑な場合もあり、漏れがあると、遺産分割協議が無効になるなど重大な不利益を被る可能性もあります。
当事務所では、相続人調査サポートとして、法定相続情報証明一覧図の保管作成を行っておりますので、不安がある、面倒くさいといった方は、ご利用下さい。
広域交付について
令和6年3月1日より、相続人の方であれば、故人の本籍地が遠方であっても、最寄の役所で、故人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍、改正原戸籍)を取得することができるようになりました。
対象:故人(被相続人)の配偶者、子などの直系の相続人(兄弟姉妹は対象外)で、ご本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)をお持ちいただき、最寄の役所の戸籍証明の窓口で「広域交付」で請求してください!
これはかなり便利な制度です。
作成の注意点
戸籍謄本や住民票の記載のとおりに記載しましょう!
まとめ
戸籍謄本などによる相続人の確定は確かに面倒ですが、相続手続きをするうえでとても最初の一番重要な作業になります。
ここを誤りますと、このあとに続く遺産分割協議や相続財産の承継に大きな問題を抱えることになります。
決しておろそかにはできません。
当事務所では、法務局で証明する「法定相続情報証明一覧図の保管及び写しの申出」代理サービスなどを通じて、相続人の確定をサポートします。
お気軽にご相談ください。