法定相続分で遺産を割り切れればいいですが、実際には割り切れない場合圧倒的に多く、また、相続税対策や譲渡所得税対策から、遺産分割協議を経ても不動産を複数の相続人が共有名義で取得する場合もあります。
この場合に注意していただきたい点は以下のとおりです。
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注意点
1. 共有者間で不動産の利用、管理、処分の認識が異なっている場合
不動産複数相続した相続人間で、将来的なその不動産の利用、管理、処分について方向性が一致していない場合、共有者間で解決できないほど人間関係が悪化し、最悪の場合相続人間の関係破綻と利用管理処分の不可に陥ることも想定されます。
例えば、この不動産が収益物件で、Aは大切に管理して保有し続けたいと思っていても、Bは借金が多く高値で売れるうちに処分して返済にあてたいと考えていた場合などです。
もしBが延滞等をおこして債権者からB持分について差押され強制競売手続きに入ったら、Aは不動産を手放す結果になってしまう危険性が出てきます。
まさにこれが共有名義リスクです。
2. 相続が代々続き、共有名義人が多数になってしまう
不動産を相続人A・Bの2名が相続した後、Aが死亡しその相続人C・D・E・FがAの持分を承継し、その後Bも死亡し、G・H・I・J・KがBの持分相続。
その後Dも死亡しL・M・Nが、Jも死亡しO・P・Q・Rがそれぞれも持分を相続した場合で、その間相続登記を一切してこなかった場合、法定相続人はC・E・F・G・H・I・K・L・M・N・O・P・Q・Rの14名となってしまいます。
さらにEが行方不明だったとしたら、遺産分割協議をすることは困難を極めます。
さらに法定相続人間で遺産分割に意見の大きな相違がある場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てるしか方法はないかもしれません。
大げさな例えかもしれませんが、現実に起きている事案です。
売却か分割か
様々な理由で遺産である不動産を複数相続せざるを得ない事情もあると思いますが、上記のような共有名義リスクがあるため、不動産複数相続を回避できる方法をまず検討されることをお勧めします。
具体的には、土地であれば売却するか不動産(土地)を物理的に分割するかです。
1. 売却
売却して売却代金を相続人で分ける方法です。
メリット
手続きが比較的簡単です。
デメリット
不動産会社への仲介手数料、不動産譲渡所得税等の費用がかかります。
不動産によっては売れないというリスクもあります。
2. 物理的な分割(分筆)
例えば、相続人が2名で法定相続分が均等であれば、真四角の1筆の土地を2筆に分筆し、2筆になった土地をそれぞれが単独で相続する方法があります。
メリット
土地の売却に限らず、自由に利用(自宅や貸家などを立てる等)ができる。
デメリット
確定測量代や分筆登記費用がかかる。
売却する場合は上記1のデメリットもあり。
分割する土地の道路付や位置によって土地の評価が大きく変わる可能性があり、税理士や不動産会社と相談したほうがいいです。
3. 代償分割
特定の相続人が不動産の名義を取得し、他の相続人に法定相続分に見合った代償金を支払う方法です。
不動産名義を取得する相続人に金銭的余裕がある場合に活用されます。
比較的多く(特に税理士介在の場合)活用されているのが実感です。
まとめ
不動産複数相続は、遺産分割当時の事情などからやむなく行うケースがあると思いますし、それが一番の最適解である場合もございます。
ただし、不動産複数相続で共有名義になった場合には、将来的に上記のような共有名義リスクが孕んでいますので、将来のことや税金面なども考慮して単独名義にできる方法をまず考えていただくことをお勧めします。
当事務所では全体の遺産状況を把握させていただいたうえで、遺産分割の最適解を検討させていただきます。
また提携の税理士事務所、不動産会社などと連携しての相談ができますので、どうぞ遠慮なくご相談ください。