家族信託と遺言書の違い・使い分け

家族信託について

家族信託とは、家族間で資産を管理・承継するための仕組みであり、近年注目されています。

特に相続対策や財産管理の手段として利用されることが多く、資産の保全や効率的な相続を実現するために有効です。

家族信託の基本的な仕組みから、導入のメリット・デメリットまでをわかりやすく解説します。

家族信託とは?基本的な仕組み

家族信託とは、委託者と受託者との信託契約に基づいて、信託財産を指定された受託者が管理・運用し、その成果を指定された受益者(通常は委託者が受益者)に還元する仕組みです。

家族信託は、資産を管理・運用するための「信託」の制度を家族間で活用する方法であり、家族間での信頼関係を基にした資産の承継を目指します。

  • 委託者:財産を信託する人(例:親)。
  • 受託者:信託財産を管理・運用する人(例:子供)。
  • 受益者:信託財産から利益を受け取る人(例:親や家族)。
  • 信託契約:これらの役割と流れを定義する契約書。
  • 財産の種類:不動産、預金、株式など。

家族信託のメリット

1. 認知症による資産凍結防止対策として有効

認知症になり判断能力に疑義が生じる事態となった場合、不動産の売却や預貯金の引出等が事実上できなくなってしまいます。

こうなる前に、高齢の親が元気なうちに、信託契約を結んでおけば、受託者(例えば子ども)がその後も資産を管理し続けることができます。これにより、認知症発症後も財産管理が滞ることなく、円滑に行うことができます。

2. 相続争いを避ける

家族信託は、信託契約に基づいて事前に相続計画を立てることができるため、相続時のトラブルを未然に防ぐことができます。遺産分割の際に親族間で争いが起きることを回避できるため、安心して資産を次世代に承継できます。

3. 柔軟な資産管理

信託契約に基づいて、受託者が財産を自由に管理・運用できるため、資産の保全や増加を目的とした柔軟な管理が可能です。例えば、不動産の管理や株式の運用も含めて、効率的な資産運用を行うことができます。

4. 遺言書との組み合わせ

家族信託は、遺言書との併用が可能です。遺言書では相続分を指定することができますが、家族信託ではその後の資産の運用方法や管理方法まで決定することができ、より詳細な相続対策が可能になります。

5. 資産の一部のみの信託も可能

特定の資産のみを信託の対象とし、残りは通常通り相続財産の対象にすることができます。

例えば、特定の賃貸物件のみ受託者に信託させ、自分が亡くなった後もその信託財産を受託者に引き継がせ、他の相続人に関与させない、ということもできます。

家族信託のデメリット

1. 手続きが複雑

家族信託を実施するには、信託契約の作成や公証手続き、登記手続きなど、専門的な知識が求められることがあります。これらの手続きを間違いなく行うためには、信託に精通した専門家のサポートが必要になる場合があります。

2. 費用がかかる

家族信託の契約には専門家に依頼する費用がかかるため、初期費用が高くつく場合があります。

また、信託を設定した後も、定期的な管理や運用に関する費用が発生することがあります。

3. 受託者の責任

受託者は信託財産を管理・運用する責任を負います。そのため、受託者には高度な管理能力や運用能力が求められます。

もし受託者が不適切な運用を行うと、受益者に対して責任を問われる可能性があるため、信託契約を結ぶ際には慎重に受託者を選定する必要があります。

家族信託の活用事例

1. 不動産の管理

不動産を信託財産として管理することで、親が亡くなった後も、子どもたちがそのまま不動産を相続・管理できます。これにより、売却や貸し出しなどの管理がスムーズに行えるようになります。

2. 金融資産の運用

家族信託を使って、株式や投資信託などの金融資産を管理することも可能です。

受託者は資産を運用し、得られた利益を受益者に分配します。

このように、資産の管理が効率的に行えるのも大きな魅力です。

家族信託を検討する際の注意点

家族信託を導入する際には、まず自分の資産状況や家族構成を十分に把握し、信託契約の内容を慎重に決めることが重要です。

また、受託者には信託財産を適切に管理する能力が求められるため、信頼できる人物を選び、家族の同意を得る事が重要です。

家族信託について-まとめ

家族信託は、資産管理や相続対策に非常に有効な手段であり、特に高齢者の財産管理や相続時のトラブル防止に役立ちます。

しかし、導入には専門的な知識が必要であり、費用もかかるため、慎重に検討することが重要です。

信託の導入を検討する際には、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。

家族信託と遺言書の使い分け

家族信託の特徴と主な用途

家族信託は、財産の「管理」と「運用」に重点を置きます。認知症や身体的な制約により財産の管理が難しくなった場合にも備え、財産を信頼できる家族に託す仕組みです。

特徴

  • 信託契約の成立
    委託者(財産を託す人)と受託者(財産を管理する人)の間で信託契約を締結することで成立します。組成には当事者間の契約締結能力が必要です。

  • 信託財産の管理
    財産は受託者が管理・運用しますが、利益は受益者が享受します。委託者自身が受益者になることが一般的です。

  • 管理が長期間にわたる
    信託契約の期間中、受託者は委託者が定めた目的に従って財産を管理します。

  • 認知症対策
    委託者が認知症になった場合でも、受託者が契約に基づき財産を適切に管理できます。

主な用途

  • 認知症や障害に備えた財産管理。
  • 特定の目的のための財産運用(例:親が死亡後も障害を持つ子供の生活費を確保)。
  • 遺産分割を防ぎ、円滑に財産を管理・承継。

遺言書の特徴と主な用途

遺言書は、死亡後の財産分配や承継を指示する法的文書です。

財産分与や法定相続人以外への遺贈を指定する場合に使われます。

特徴

  • 効力が発生するタイミング
    遺言書の内容は、遺言者の死亡時に初めて効力を発生します。

  • 書式の厳格性
    自筆証書遺言、公正証書遺言などの形式があり、形式不備があると無効になる場合があります。

  • 遺言執行者の指定
    遺言の内容を実現するために、遺言執行者を指定することが可能です。

  • 家族の同意は不要
    遺言書は遺言者の意思のみで作成できます。

主な用途

  • 遺産分割の指定(法定相続分と異なる配分)。
  • 法定相続人以外の人への遺贈(例:内縁の配偶者、寄付)。
  • 未成年後見人や遺産管理人の指定。

家族信託と遺言書の違いと使い分け

項目 家族信託 遺言書
目的 財産の「管理」や「運用」 財産の「承継」や「分配」
効力の発生時期 契約締結後すぐ 遺言者の死亡後
管理の継続性 委託者の生前・死後を通じて管理可能 死亡後の分配のみ
認知症対策 可能 不可能
主な法的根拠 信託法 民法

具体的な使い分けの例

認知症対策が必要な場合

家族信託を活用して財産を管理し、スムーズな運用を図る。

財産分配の指定が重要な場合

遺言書で相続人や受遺者への具体的な配分を指示する。

生前も死後も一貫して財産を管理したい場合

家族信託を使いながら、遺言書で死後の財産承継を補完する(遺言代用信託)。

併用が効果的な場合

家族信託と遺言書は互いに補完的な役割を果たします。

たとえば、家族信託を使って生前の財産管理を行い、遺言書で信託財産以外の財産(例:保険金や未信託の不動産)の分配を指定することで、包括的な財産管理と承継が実現します。

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