相続が発生すると、不動産などの名義変更、すなわち相続登記が必要になります。
しかし、相続人の中に相続放棄をした方がいる場合、その対応方法は通常のケースよりも複雑になります。
ここでは、相続放棄に関連する相続登記のポイントをわかりやすく解説します。
このページの目次
1. 相続放棄とは?
相続放棄とは、相続人が被相続人(故人)の財産を相続しないと選択する手続きです。
相続財産にはプラスの財産(不動産や預金など)だけでなく、マイナスの財産(借金や未払い金)も含まれます。
そのため、負債の相続を避けるために相続放棄を選ぶケースが多いです。
相続放棄をするには、家庭裁判所に対して所定の申述という手続きを行う必要があり、この手続きが完了すると、最初から相続人でなかったものとして扱われます。
2. 相続登記対応方法
相続放棄が絡む場合、登記の手続きも通常とは異なります。以下が主な対応方法です。
相続放棄者を除外して登記
相続放棄が認められた場合、その方は法律上相続人ではなくなるため、不動産の登記名義には含まれません。
登記申請時には、相続放棄が認められた証明書(家庭裁判所が発行する受理通知書など)を添付する必要があります。
他の相続人への影響
相続放棄をした場合、その人の相続分は他の相続人に分配されます。たとえば、兄弟姉妹の一人が相続放棄をした場合、残りの相続人がその分を引き継ぐ形となります。
相続放棄した者の登記必要書類(下記のいずれか1点)
① 相続放棄申述受理通知書
相続放棄が受理され、家庭裁判所から放棄した相続人に送られてくるもの
② 相続放棄申述受理証明書
上記①を家庭裁判所に提出して証明書として発行されるもの、手数料がかかる。
③ 相続放棄申述有無照会書
相続放棄をしたかどうかを家庭裁判所に照会し、その結果を記載した家庭裁判所発行の書面。
上記①②がない場合や、他の相続人や利害関係人から照会をすることができます。
3. 他の相続人への影響
相続放棄により、その方が遺産分割協議の場に参加することはありません。
しかし、相続放棄の結果、次順位の相続人が新たに登場するケースもあります。
例えば、兄弟が全員相続放棄をした場合、次に甥や姪が相続人となる場合があります。このように相続関係が複雑化する可能性があるため、事前の確認が重要です。
4. 相続放棄の期限と必要書類
相続放棄を行うには、以下の点を注意する必要があります。
期限
相続放棄の申述は、自分が相続人であることを知った日(自分のために相続が開始したことを知った日)から3か月以内に行う必要があります。
この期限を過ぎると、相続放棄は認められない可能性があります。
必要書類
手続きの概要は以下のとおりです。
期間 | 自分が相続人であることを知った日から3か月以内 |
管轄 | 故人の死亡時の住民登録上の住所地を管轄する家庭裁判所 |
手続き | 相続放棄の申述書を作成して提出 |
必要書類 | ・故人の出生から死亡までの戸籍(除籍、改正原戸籍)証明書 ・故人の住民票の除票または戸籍の附票 ・相続放棄する方の戸籍証明書 |
相続放棄する方が代襲相続人の場合
親の出生から死亡までの戸籍(除籍、改正原戸籍)証明書
相続放棄する方が親の場合
子や孫が亡くなっているまたはいないこと確認できる戸籍(除籍、改正原戸籍)証明書
相続放棄する方が兄弟姉妹の場合
子や孫が亡くなっているまたはいないこと確認できる戸籍(除籍、改正原戸籍)証明書および故人の親の出生から死亡までの戸籍(除籍、改正原戸籍)証明書
これらを揃えて家庭裁判所に申述し、相続放棄が認められると、相続放棄受理通知書が交付されます。この通知書は、相続登記の際にも重要な書類となります。
5. 相続放棄と遺産の放棄は違います
遺産相続の場面で、相続人から「私は放棄します」との発言を聞くことが多々ありますが、この場合民法に規定の相続放棄ではなく、単に遺産分割協議の中で遺産を放棄しますという意味合いであることが多いです。
遺産の放棄は、遺産はもらわないものの相続人であることには変わりありません。
ですので、遺産分割協議に参加する必要のある方、ということになります。
この点、ご注意ください。
相続放棄と遺産放棄の違い
相続の放棄 | 遺産の放棄 | |
手続き | 管轄の家庭裁判所に相続放棄申述書を提出 | 遺産分割協議の中で財産を承継しなければいい |
期限 | 原則、相続開始から3か月以内 | 期限なし |
効果 | 初めから相続人ではなくなる遺産、負債の一切を承継しない | 相続人としての地位は継続遺産を受け継がないものの、負債については他の相続人と連帯債務を負う。 |
6. 司法書士に相談を
相続放棄が絡む相続登記は、書類の準備や法律の解釈を正確に行う必要があります。
専門家のアドバイスを受けることで、スムーズかつ適切に手続きを進めることが可能です。当事務所では、当事務所では安心して相続人が登記名義を取得するために、相続手続きについて下記4つのサービスを提供しています。
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