「元気なうちに自宅を子どもに渡しておきたい」「長年連れ添った配偶者に自宅を贈与したい」。生前贈与による不動産の名義変更は、相続対策としてよく検討される方法です。一方で、贈与には相続にはない税金がかかり、かえって負担が大きくなることもあります。このページでは、生前贈与による名義変更の手続きと、事前に確認しておきたいポイントを司法書士が解説します。
このページの目次
生前贈与で不動産の名義を変える手続き
- ご相談・事前の確認:登記簿で現在の名義や抵当権の有無を確認し、固定資産評価額をもとに税金の概算を出します。贈与と相続のどちらがよいかも含めて検討します
- 贈与契約書の作成:贈与する方(贈与者)と受け取る方(受贈者)の間で、贈与契約書を作成します
- 必要書類の準備:贈与者の登記識別情報(または登記済証=権利証)と印鑑証明書、受贈者の住民票、固定資産評価証明書などをそろえます
- 登記申請:府中市内の不動産であれば東京法務局府中支局に、所有権移転登記を申請します
- 完了・書類のお渡し:新しい名義人の登記識別情報をお渡しします。翌年に贈与税の申告が必要な場合は、税理士と連携してご案内します
生前贈与にかかる税金・費用
不動産の生前贈与では、主に次の税金がかかります。相続による名義変更と比べると負担が重くなりやすい点に注意が必要です。
- 登録免許税:固定資産税評価額の2%(相続による名義変更は0.4%)
- 不動産取得税:贈与の場合は課税されます(相続による取得は非課税)
- 贈与税:受け取った方にかかります。暦年課税(年110万円までの基礎控除)と相続時精算課税(累計2,500万円までの特別控除に加え、年110万円までの基礎控除)のどちらかを選びます
このほか、司法書士への報酬と、登記事項証明書などの実費がかかります。報酬はお見積りで事前にお示しします。
贈与する前に確認しておきたい5つのポイント
1. 相続まで待った方が有利なことも多い
上のとおり、登録免許税・不動産取得税・贈与税のいずれも、相続の方が軽くなるのが一般的です。「子どもに早く渡したい」という理由だけであれば、遺言書で確実に引き継ぐ方法の方が負担を抑えられる場合があります。
2. 婚姻期間20年以上の夫婦には特例がある
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産(または購入資金)を贈与する場合、基礎控除とは別に最高2,000万円までを控除できる特例(配偶者控除)があります。適用には贈与税の申告が必要です。
3. 亡くなる前の一定期間の贈与は相続財産に加算される
暦年課税で贈与した財産のうち、亡くなる前の一定期間内のものは相続税の計算に加算されます。令和6年1月1日以後の贈与から、この期間は3年から7年へ段階的に延長されています。相続税がかかりそうなご家庭では、税理士と連携して計画的に進めることが大切です。
4. 住宅ローンが残っている不動産は金融機関の確認が必要
抵当権が付いている不動産を無断で贈与すると、ローン契約に違反するおそれがあります。事前に金融機関への確認が必要です。
5. 他の相続人との公平にも配慮する
特定のお子さまだけに自宅を贈与すると、将来の相続で他のお子さまから遺留分(一定の相続人に保障された最低限の取り分)を主張されることがあります。遺言書の作成と合わせて検討すると、ご家族の納得感が高まります。
当事務所のサポート
当事務所は、贈与契約書の作成から登記申請までをお引き受けします。税金の試算や贈与税の申告は提携する税理士と連携し、「贈与する・しない」の判断から一緒に考えます。相続・遺言・家族信託の実務経験をもとに、贈与以外の選択肢も含めて中立的にご説明しますので、「本当に贈与した方がよいのか分からない」という段階でもお気軽にご相談ください。
よくあるご質問
Q. 親子間で不動産を安く売買すれば、贈与税はかかりませんか?
A. 時価より著しく低い価格での売買は、差額について贈与があったものとみなされ、贈与税がかかることがあります。価格の決め方は税理士と相談のうえ進めることをおすすめします。
Q. 土地の持分の一部だけを贈与することはできますか?
A. できます。毎年少しずつ持分を贈与する方法もありますが、そのたびに登記費用がかかるため、トータルの費用を比べて判断します。

